フィリピンの永住権・長期滞在ビザを比較
フィリピンの長期滞在ビザには、フィリピン政府が公式に認めている永住権と、永住権ではないけれども事実上は永住権に近い長期滞在ビザに大別することができます。
公式に認められている永住権は、クォータービザと結婚ビザのみ。
永住権に近い長期滞在ビザは、特別居住退職者ビザ(SRRV)と特別投資家ビザ(SIRV)の2種類。また2025年6月にはデジタルノマドビザが新設されました。
なお、以前紹介していたAPECO特別永住権ビザ(APRV)は2023年11月からすべてのビザ発行が停止されており、2026年3月時点でも再開の見通しは立っていません。
| ビザの種類 | 費用 | 年齢制限 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特別居住退職者ビザ(SRRV) | 1.5万〜5万米ドルの預金 | 40歳以上 | 2025年9月に大幅改定。年齢制限が50歳→40歳に引き下げ。年齢・年金の有無で預金額が変動 |
| クオータービザ(Quota Immigrant Visa) | 10万米ドルの預金 | 30歳以上 | 結婚以外の方法で唯一とれるフィリピン政府公認の永住権。2025年に預金額が5万→10万ドルに倍増、年齢・滞在要件も厳格化 |
| 特別投資家ビザ(SIRV) | 7万5000米ドルの株式投資 | 21歳以上 | 預金ではなくフィリピン上場株等への投資がビザの取得条件 |
| 結婚用永住移住査証ビザ(13A・13B) | 申請費用のみ | 18歳以上 | 唯一供託金や投資が不要な永住権。配偶者との離婚・死別で永住権は失効 |
| デジタルノマドビザ(2025年新設) | 申請費用のみ | 18歳以上 | 海外の雇用主・クライアントのためにリモートワークする外国人向け。最長2年滞在可能。フィリピン所得税が免除 |
この中で日本人が現実的に手に入れやすいのは「特別居住退職者ビザ(SRRV)」「クォータービザ」の2つです。リモートワーカーであれば、2025年新設のデジタルノマドビザも有力な選択肢になります。
特別居住退職者ビザ(SRRV)
特別居住退職者ビザは、フィリピン退職庁(PRA)が発行する日本人に最も人気の長期滞在ビザです。
2025年9月1日に大幅な制度改定が行われました。主な変更点は以下の通りです。
- 年齢制限:50歳以上→40歳以上に引き下げ
- 預金額:以前は一律2万米ドル(クラシック)→年齢・年金有無による1.5万〜5万米ドルのスライド制に変更
- 申請料:1400米ドル→1500米ドルに値上げ
- SRRVスマイル・ヒューマンタッチ:廃止(以前はクラシック含め4種類→現在は2種類に整理)
- BIクリアランス証明書:入国管理局の身元証明が新たに必要
現在のSRRVはSRRVクラシックとSRRVコーテシーの2種類です。
| SRRVクラシック | 年金受給者 | 年金なし |
|---|---|---|
| 50歳以上 | 1万5000米ドル | 3万米ドル |
| 40〜49歳 | 2万5000米ドル | 5万米ドル |
| SRRVコーテシー | 条件 |
|---|---|
| 50歳以上 | 1500米ドルの預金(元フィリピン国籍保有者、元大使・元外交官等) |
| 40〜49歳 | 3000〜6000米ドルの預金 |
- 取得条件:指定されたフィリピンの銀行への預金(年齢・年金の有無で金額が変動)+入国管理局(BI)のクリアランス証明書の取得
- 費用:申請料1500米ドル(旧:1400米ドル)+年360米ドルの更新料+代理店費用
- 年齢制限:40歳以上(旧:50歳以上。2025年9月改定で引き下げ)
- 就労可否:可能だが、別途外国人就労許可が必要
- 更新頻度:1年に1度
- 家族の永住権の取得:可能(扶養家族2名まで。3人目以降は追加預金1万5000米ドル/人)
- 特典:PHILHEALTH(健康保険)が使える、旅行税の免除、年金の所得免除、最大 7,000 米ドル相当の家財および身の回り品の 1 回の輸入に対する関税および税金免除、ACR-I カードの保有義務の免除
2025年9月の改定で年齢制限が40歳に引き下げられ、以前より若い世代でも取得できるようになりました。ただし預金額は年齢・年金の有無で大きく異なります。50歳以上の年金受給者であれば1万5000ドルと最もハードルが低くなります。
特別投資家ビザ(SIRV)
特別投資家居住ビザ(SIRV, Special Investor’s Resident Visa)は、1987年に制定されたオムニバス法の規定に基づき、投資委員会(BOI)を通じて移民局(Bureau of Immigration Philippines)が発行するビザです。
- 取得条件:上場企業、IPPプロジェクトに参加している会社、非上場企業(製造業、サービス業のみ)、政府証券(国債等)へ7万5000米ドル以上投資
- 費用:申請料1400米ドル+年360米ドルの更新料+代理店費用
- 年齢制限:21歳以上
- 就労可否:可能
- 更新頻度:1年に1度IDカードの更新必要あり(特定分野に投資した場合は3年更新)
- 家族の永住権の取得:可能
- 特典:PHILHEALTH(健康保険)が使える、旅行税の免除、年金の所得免除、最大 7,000 米ドル相当の家財および身の回り品の 1 回の輸入に対する関税および税金免除、ACR-I カードの保有義務の免除
特別投資家ビザを取得する大半の外国人は、ジョリビー、サンミゲル、BPI、アヤラなどフィリピンの上場株の中でも主要な銘柄に分散投資をします。
クオータービザ(Quota Immigrant Visa)
クオータービザは、フィリピン政府が特定の国に対してのみ発行し、各国ごとに年間50人までの人数制限がある永住権です。
他の長期滞在ビザと異なり、公式に永住権として国から認められており、ビザ取得後は預金を自由に引き出すことができるなど大変魅力的なビザです。
2025年に大きな制度変更がありました。2025年初頭に一時発行停止され、2025年5月に再開。同年9月15日からのVIMS(Visa Issuance Made Simple)プログラムにより、預金額が5万ドルから10万ドルに倍増、年齢制限の引き上げ、180日間のフィリピン滞在実績が新たに求められるようになりました。
人数制限もあることから代理店費用が高額になりがち、また誤った代理店を選ぶとビザが取れないといったマイナス面も存在します。
- 取得条件:指定のフィリピン国内銀行へ10万米ドル預金(旧:5万米ドル。2025年に倍増)+180日間のフィリピン滞在実績(2025年新設の要件)+フィリピン国益に資する専門能力・投資の証明
- 費用:年間数百ペソの更新料+代理店費用(100万円〜200万円前後)
- 年齢制限:30歳以上(旧:21歳以上。2025年改定で引き上げ)
- 就労可否:可能
- 更新頻度:1年に1度
- 家族の永住権の取得:不可能。家族全員分別々に申請する必要あり。
結婚用永住移住査証ビザ(13A・13B)
結婚用永住移住査証ビザは他の長期滞在ビザ、永住権と異なり金銭的な制約がないため、フィリピン人に移住し、長期滞在をする日本人からは人気のビザとなります。結婚してからは1年間の仮ビザ(13A)が降りる。結婚から1年後の面接の後、永住権となる(13B)が降ります。結婚ビザには「離婚もしくは相手が死別したらビザ自体が無効になる」という大きな罠があります。
- 取得条件:フィリピン人と結婚すること
- 費用:数千ペソ程度
- 年齢制限:18歳以上
- 就労可否:可能
結婚の時に離婚のことを考える人間はいませんが、事実、フィリピン人と結婚する日本人の過半数は離婚します。一定資産があり、フィリピンの永住を検討されているのであれば、結婚ビザではないビザをとっていく方が安全です。
APECO特別永住権ビザ(APRV)【停止中】
⚠ APECO特別永住権ビザは、2023年11月3日よりすべてのビザ発行が停止されています。2026年3月時点で再開の見通しは立っておらず、APECOは過去に発行したビザの全面的なレビューを実施中です。また、APECOビザの発行を騙る詐欺業者に対する注意喚起も出されています。
以前はフィリピンのオーロラ州経済特区への投資で永住権を取得できるプログラムでしたが、現在は新規申請を受け付けていないため、選択肢には入りません。
デジタルノマドビザ(2025年新設)
デジタルノマドビザは、2025年4月の大統領令第86号に基づき、2025年6月23日にパイロット運用が開始された新しいビザです。海外の雇用主やクライアントのためにリモートワークをする外国人を対象としています。
最大の特徴は、フィリピンでのリモートワーク収入に対してフィリピン所得税が免除される点です。永住権ではありませんが、最長2年間の長期滞在が可能です。
- 取得条件:海外の雇用主・クライアントのためにデジタル技術を使ってリモートワークをしていること+年間約2万4000米ドル以上の収入+滞在期間をカバーする医療保険+犯罪経歴なし
- 費用:申請費用のみ(オンラインe-visaプラットフォームで申請)
- 年齢制限:18歳以上
- 滞在期間:最長1年(1回更新可能で最長2年)
- 就労可否:海外クライアント・雇用主向けのリモートワークのみ可。フィリピン国内企業での就労は不可
- 税制上の扱い:フィリピンの税務上の居住者とはみなされず、リモートワーク収入に対するフィリピン所得税は免除
- マルチプルエントリー:有効期間中の複数回出入国が可能
フリーランスやリモートワーカーにとっては非常に魅力的な選択肢です。永住権ではありませんが、所得税免除でフィリピンに最長2年滞在できるのは大きなメリットです。
フィリピン永住権に関するよくある質問
肌感としては結婚ビザ≒クオータービザ→ APECO→特別投資家ビザ≒特別居住退職者ビザの順番で優遇されています。
2026年時点でもフィリピンの移民局には不透明な部分があり、人数制限のあるクォータービザにおいては特定の業者との癒着が横行しています。
引用元・参考ソース
- PRA(フィリピン退職庁)- SRRV公式ページ:pra.gov.ph
- ACCRALAW - Updates on the Philippines' Retirement Visa Program(2025年10月):accralaw.com
- Bureau of Immigration - クオータービザ:immigration.gov.ph
- Asia Relocation - Section 13 Quota Visa After the 2025 Suspension:asia-relocation.com
- APECO - ビザ発行停止に関する公式通知:apeco.gov.ph
- Bureau of Immigration - APECO停止命令(IMO 2023-001):immigration.gov.ph(PDF)
- EY - Philippines Announces New Digital Nomad Visa:ey.com
- Bureau of Immigration - 13A Marriage Visa:immigration.gov.ph
※ 上記のビザ要件・費用は2026年3月時点の情報です。最新の要件については、PRA・移民局等の公式サイトをご確認ください。

